アロマメディエーターうえむらです。
アロマテラピーのマストアイテムである精油選びにまつわるお話です。
メディカルグレードなんて聞くと、品質が高いとか、高い効果を得られる精油のように感じられますよね。
この精油のグレードって、何を基準に誰が決めているのでしょう。
メディカルグレード、クリニカルグレード、セラピーグレードだったら、どれが一番上なの?
グレードという言葉の意味を確認しつつ、おせっかい記事を書いてみます。
グレードの意味を「お米」を例に確認してみる
まずは、グレードという言葉の意味を確認してみましょう。
グレード(grade)=等級
辞書によると。
等級とは「上下・優劣の順位を示す段階」とあります。
例えば、お米の評価で「特A」とか「A´」という等級を聞いたことがありませんか?
これは、一般財団法人日本穀物検定協会という機関による評価です。
食味評価を行う20名のエキスパートが、毎年、銘柄ごとに提出されたお米(ごはん)を食べて、官能試験というものを実施し、評価しています。
お米の銘柄ごとの優劣。
まさにグレードですね!
これは、基準米と試験米を項目ごとに比較し、それを総合的にみて判定するのですが。
ここでポイントになる点は2つ。
①評価の基準があらかじめ決まっているということ。
②評価するのは、試験米を作っている人や売っている人ではなく、第三者であるということ。
これによって、客観的かつ公平な情報を消費者に提供しているのです。
とはいえ、これはあくまでも日本穀物検定協会が決めた基準によって導かれた評価。
好みは人それぞれですし、参考にしようとしまいと自由ですが。
日本人の好みを踏まえて、お米のプロたちが評価項目を定めているので、私なら参考にします。
精油のグレードは、誰が、どんな基準で決めているの?
では、精油に置き換えて考えてみます。
例えばメディカルグレードの精油って、誰がどんな基準でそう決めているのでしょう?
他にどういうグレードがあって、その中のどの段階なのでしょう?
この質問に答えられる人は、いないはずです。
なぜなら、〇〇グレードは“自称”だから。
少なくとも、この記事を書いている2020年6月現在、日本には精油の品質に等級をつける機関は存在しませんし、メディカルアロマの本場と言われているフランスにもないはずです。
自身が製造や販売、あるいは使っているブランドの精油が好きだからこそ、こだわりがあるからこそ、よさを伝えたい。そう思うのは自然なことです。
〇〇グレードとか、最高級とか。
品質の高さを想起させるような枕詞をつけたくなる気持ちはわかります。
でも残念ながら、これは客観的な基準に則ったものではありません。
「メディカルアロマを教えている講師に支持されている」
「どこかの病院で使われている」
「セラピストによく使われている」
など(の情報)を理由に、そう“自称”しているということです。
精油の“プロフィール”と“グレード”は別もの
たとえば、「なぜ、この精油は〇〇グレードなの?」という問いに
「メディカルアロマの本場フランスの医療現場で使われているから」
「薬局で処方されているから」
「セラピストに支持されているから」
という返答は、〇〇グレードという等級を表す表現の理由、根拠にはなりません。
なぜなら、お米の例で書いた2つのポイント「あらかじめ決められた基準」によって「第三者が判定している」ものではないから。
客観性も公平性もないから。よその精油との比較になっていないから。優劣のつけようがありません。
「メディカルアロマの本場フランスの医療現場で使われている」
「薬局で処方されている」
「セラピストに支持されている」
事実なら、それを標榜するのはなんら問題ありません。
でも、それが事実であることと、〇〇グレードを自称することは別の話です。
じゃあ、それって一体、どこの病院で使われているの?いま現在どれくらいの数の病院で使われているの?どんな風に使われて、どういう成果をもたらしているの?
フランスのどこか1か所の診療所で使っているだけでもOKですか?10か所なら?100か所なら?
100か所あって、1つの病院が、年間3人に処方しているだけでもOKですか?10人なら?100人なら?
100人に処方して、よい成果が得られたのが年間3人でもOKですか?10人なら?100人全員なら?
どこからが〇〇グレードで、どこからが××グレードなんでしょう?
基準もなく、比較対象もなく、具体的な数や成果の情報もないのに、どうグレードが決まるのでしょう?
残念ながら、“自称”でしかありません。
グレードという言葉より、プロフィール、個性に注目!
客観的な基準がない以上、グレードを評価する(感じ取る)のは、消費者です。
「メディカルアロマの本場フランスの1000病院で使われている」
「パリにある〇〇病院で年間約1000人の患者に処方され、約半数に有用性があった」
「〇〇の研究機関の試験で、この精油を使って、80%の人の〇〇が改善された」
基準がなくても、このような事実があるなら、それを標榜すればよいのではないでしょうか。
それを証明できるものを明示すれば、どれだけ信頼に値するでしょう。
きっと多くの消費者は「品質が高そう」「効果がありそう」「安全性が高そう」=グレードの高い精油と思うはずです。
それを書かずに、〇〇グレードという言葉に頼って、よさをアピールしようとするのは面倒だから?
もしかしたら、本当は〇〇グレードと呼ぶに足るだけの事実がないのかもしれません。
〇〇グレードという言葉を使って品質のアピールをするのは、ある意味簡単です。
その言葉を使えばいいだけだから。
でも、本当に素晴らしいもので、その理由があるなら、本当にこわだわりや自信があるなら。
誰でも自由に使える〇〇グレードという言葉より、事実を、その精油のプロフィール、個性を、もっと丁寧に発信してほしい。
私は、そう思います。
それが、真に大切にしている精油へのリスペクトだと思うから。
事実を具体的に継続的に。手間ひまが愛情の証
事実とは、たとえばこんなことです。
・オーガニック認証や無農薬認証がある
・化粧品としての認可を取得している
・精油の材料となる花を1つ1つ丁寧に手摘みしている
・〇〇にしか生育していない希少な植物から採れる
・年間100本限定で生産
・低温で通常の2倍の時間をかけて蒸留している
・日本国内の第三者機関による成分分析表がある
・その精油を治療に生かしている病院のリストがある
・その精油によって得られたエビデンスがある
・すべて自社農場で育てた植物を原料としている
・複数の農場と契約し、品質や成分を一定に保っている
この事実を、どう解釈するか、何に魅力を感じるかは、消費者次第です。
アロマテラピーは予備知識がないと、こうした事実からだけでは、なかなかよさを汲み取ってもらえなかったりもします。
だから、ついグレードという言葉に頼ってしまうのかもしれません。
でもそれは、やっぱり安易というか誠実じゃない気がします。
また、数ある精油の中から、選んでもらえるようにするには、上記のような事実を明記するだけではなく、伝え方も大事ですよね。
・農場に足を運んだ社長がその様子を日々ブログで発信する
・病院で得られた治療の成果をレポートにする
・植物の成長を写真で見せる
・農場の見学を受け入れる
・その精油とのコラボ商品を開発する
・精油の良さを感じてもらえるイベントに参加する
・その精油で作るクラフト講座を開催する
こういったことを、継続的に行うのって、手間や時間、お金がかかります。
「メディカルアロマの本場フランスの医療現場で使われているメディカルグレードの精油です」
と書くこととは、天と地ほどの差があります。
でも、その手間を惜しまず、よさを伝える努力をし続けるところに、その商品に対する愛情やリスペクトが伝わってくるのだと思います。
ほんとうに素晴らしい精油なら、グレードなんて言葉を使うより、事実を手間ひまかけて発信するほうが、きっとその精油の本当の魅力が伝わるはずです。
ちなみに、私は複数のブランドの精油を使いますが、一番多く使うのはプラナロムです。
プラナロムの精油をメディカルグレードだから高品質な精油であるというように説明している方を多く見かけますが、私が使う理由は、メディカルグレードだからではありません。
ここでは詳細は割愛しますが、いろいろな理由、事実から、総合的に判断しています。
他のブランドの精油を使う理由も同じ。
少なくとも、どの種類の精油も、どこかのブランドのものが、つねにすべて最高級だなんてありえませんし、使う目的が違えば、求める要素も違ってきます。
アロマの知識がなくて、どの精油を買っていいのかわからないという方ほど、グレード、最高級などの言葉に目がいきがちですが。
そんな誰もが好き勝手に使える言葉ではなく、根拠のない優劣ではなく。
その精油のプロフィール、個性に目を向けて、あなたが心惹かれる精油を選んでください。
たとえば、「店頭で香り嗅いでみて心が震えた!」とか「たった1種類の精油だけを大切に作り続ける姿勢に心打たれた」とか「自分に必要な〇〇の成分が多く入っている」とか。
あなた自身の基準、感覚を大切に。
精油の売り買い、不当表示に気を付けて!
最後にもうひとつ。
〇〇グレードとか最高級など、等級を表すような表現を、客観的な根拠なく、商品の宣伝やPRに使うのは、場合によっては景品表示法の不当表示になることも。
アロマテラピーに限った話ではありませんが、商品やサービスの宣伝やPR、説明をする際は、景品表示法や薬機法(旧薬事法)などの法律を守らなくてはなりません。
これは、消費者を守るためのもの。
「実際より良く見せかける表示が行われたり、過大な景品付き販売が行われると、それらにつられて消費者が実際には質の良くない商品やサービスを買ってしまい不利益を被るおそれがあります。(中略)消費者のみなさんがより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ります。」-消費者庁HPより
提供側になると、自分がよいと思うものを多くの人に伝えたい一心で、悪気はなくても、行き過ぎた表現、都合のよい表現を使ってしまうということが多々あります。
提供者は、消費者目線を忘れずに。
消費者は、冷静な目を失わずに。
あたなと精油のHappyな出会い、そして楽しいアロマライフを心から願っています。
▶MoaMoa Mommy
精油選びのご相談、アロマに関する原稿執筆、監修等のご依頼は、HPの連絡フォームより承ります。